2026年2月28日(土)
今日はリリと過ごせる最後の一日。
朝起きて、
いつものように話しかけた。
「おはよう。」
ご飯を用意する。
お水も用意する。
もう食べることも飲むこともないのに、
自然とそうしていた。
不思議だった。
昨日、虹の橋を渡ったのに、
まだ家の中にリリがいる感覚があった。
いや、
実際にいるんだけど。
生きていないだけで、
ちゃんとそこにいる。
だからだろうか。
想像していたより寂しくなかった。
もちろん悲しい。
でも、
苦しさから解放されたことへの安心感の方が大きかった気がする。
たまに撫でる。
猫吸いもする。
「かわいいね。」
そう話しかける。
昨日までと変わらない。
ただ返事がないだけだった。
そんな穏やかな一日を過ごした。
午後。
手土産を持って動物病院へ向かった。
病院へ着くと、
外でお母さん先生が植物に水をあげていた。
私たちの姿を見ると、
すぐ病院の中へ入っていった。
そして先生を呼んでくれた。
私は先生に伝えた。
「昨日、虹の橋を渡りました。」
「ありがとうございました。」
先生は多くを語らなかった。
でも、
きっと分かっていたと思う。
私たちの気持ちも。
リリがどれだけ頑張ったかも。
先生自身、
今までたくさんの猫を見送ってきたはずだ。
それでも、
どこか寂しそうな表情をしていた。
リリは病院が大嫌いだった。
でも最後の数週間、
本当にたくさんお世話になった。
だから直接お礼を伝えられて良かったと思う。
帰宅してからも、
私は何度もリリのところへ行った。
撫でたり。
話しかけたり。
写真を撮ったり。
明日の朝には、
いよいよお別れになる。
でもこの日はまだ、
リリと一緒にいられた。
だから私は、
いつもより少しだけ長く、
リリの頭を撫でていた。
(第12話へ続く)


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