第10話|約束を守ってくれた日

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2026年2月27日(金)

朝を迎えた。

リリは一晩中頑張った。


なんて強い子なんだろう。

そう思った。


でも今日はわからない。


とにかく仕事には行ってはいけない。


ふと思い、急遽仕事を休みに変更した。


朝早く。

痙攣が起きた。


舌を出して苦しそうに息をしている。

全身も震えていた。


「リリちゃん、大丈夫だよ。」


「ママとパパがいるからね。」


そう話しかけながら撫でていると、痙攣は落ち着いた。


痙攣が起きるたびに、

「ついに・・・」

という思いが頭をよぎる。


昼前。

コンビニへ買い出しに行った。


帰宅するとパパが言った。


「ママが出て行ったあとすぐ痙攣が起きた。」


「今までで一番すごかった。」


急いでリリを見る。


もう落ち着いていた。


でも不安で仕方がなかった。


私はずっとリリの横に寝て様子を見ていた。


耳を見る。


大きな耳の中の血管が白い。


耳の縁の血管も、いつもより薄いピンク色になっている。というか白に近い。


ああ・・・。


もうリリの体は全身に血液を送れないくらい弱っているんだ。


心音も早い。


1秒間に2回くらいの速さで鼓動している。


私はずっと話しかけた。


「リリちゃん、怖いね。」


「不安だね。」


「大丈夫だよ。」


「パパとママがいるからね。」


15時35分。


リリは目を開けたまま横になっていた。


その目には、ずっと私が映っていた。


きっと意識はもう朦朧としていたと思う。


それでも私は話しかけ続けた。


すると。


「にゃあ」


久しぶりに鳴いた。


本当に久しぶりだった。


最高に可愛かった。


今思えば、

あれは最後の「ありがとう」だった気がする。


しばらくして、

急に呼吸が速くなった。


舌を出し、

苦しそうに息をしている。


私とパパは必死に話しかけた。


「大丈夫だよ。」


「苦しいね。」


「大好きだよ。」


「今までありがとうね。」


荒い口呼吸は少しずつ落ち着き、

やがてしゃくりのような呼吸になった。


私たちはたくさん話しかけた。


たくさん撫でた。


15時50分。


リリは最後の息を吐いた。


お腹に耳を当てる。


最後の心音が止まった。


約束通りだった。


リリはパパとママに見守られながら虹の橋へ旅立っていった。


「リリちゃん、よく頑張ったね。」


「偉かったね。」


「ありがとうね。」


「大好きだよ。」


二人でたくさんの「ありがとう」を伝えた。


そして不思議なことに、

私は少し安心していた。


これでもう、

リリは苦しまなくて済む。


そう思った。


本当によく頑張った。


18年10ヶ月27日。


本当にありがとう。


すぐに見送りの準備を始めた。


最後まで目をぱっちり開けていたので、

死後硬直が始まる前に閉じてあげようと思った。


でも全然閉じない(笑)


まあ、可愛いからいいか。


後で調べたら、よくあることらしい。


目やにを拭く。


お尻を綺麗にする。


大好きだったベッドに寝かせる。


保冷剤を靴下に包み、

体の下へ入れる。


大好きだったおもちゃ。


大好きだったタオル。


そして大好きだったケージ。


いつも家の中を見下ろしていた場所へ寝かせてあげた。


事前に調べておいたペット火葬の業者へ電話をした。


明後日の朝一番でお願いすることにした。


その後、近所の花屋へ向かった。


リリのために花束を二つ買った。


黄色。


オレンジ。


元気な色。


リリによく似合う色だった。

(第11話へ続く)

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