第9話|リリと過ごした最後の夜

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2026年2月26日(木)

今日は朝からリリの様子がおかしかった。

ずっと寝ているのに、目だけは大きく開いている。


ちょっと朝一で病院に連れて行こう。

そう思っていた矢先だった。


突然、容体が急変した。


痙攣。


舌を出して苦しそうにしている。


慌ててリリのそばへ行く。

すると布団が濡れていた。


おしっこが漏れたんだ。


そう思った次の瞬間、

お尻から血が出ていることに気付いた。

小さなうんちと一緒に。


すぐ病院へ電話をした。


仕事へ行く予定だったけれど、急遽在宅勤務へ変更。

幸い、この日はパパも休みだった。


二人で急いで病院へ向かった。


その時にはもう、

心のどこかで思っていた。


もう、ダメかもしれない。


病院へ着いた。


先生の顔を見た瞬間、

自然と涙が出た。


「先生、もうダメかもしれない。」


先生は焦ることなく、

静かに言った。


「とりあえず診察室に。」


診察室には何とも言えない緊張感が漂っていた。


朝の痙攣の話をする。


先生はリリを診察しながら言った。


「とりあえず脱水症状があるので点滴をしますね。」


「あと、もう薬は飲ませなくても良いですよ。」


「体温も下がっているので暖かくしてあげてください。」


その言葉を聞いた時、

私は悟った。


先生も気付いていたんだ。


これがリリにとって最後の診察になることを。


家へ帰った。


布団の上にタオルを敷く。


その上にリリを寝かせる。


いつお漏らししても良いようにペットシーツも敷いた。


そしてパパに見守りをお願いした。


私は在宅勤務。


仕事の合間に1時間おきに様子を見る。


大丈夫。


まだ頑張っている。


リリはまだここにいる。


でももう、

いつ虹の橋を渡ってもおかしくなかった。


仕事をしながら涙が止まらなかった。


パソコンの画面が涙で見えない。


それでも仕事をしていた。


ただ一つ決めていたことがあった。


リリをひとりぼっちにしない。


その瞬間だけは絶対に。


昼ご飯も。

夜ご飯も。


一人が食べている間、

もう一人はリリのそばにいる。


ずっと撫でる。


ずっと話しかける。


「大丈夫だよ。」


「かわいいね。」


「大好きだよ。」


何度も何度も話しかけた。


リリはずっと目を開けていた。


どこを見ているのか分からない。


ただ、じっと前を見つめていた。


心拍数は高い。


時々痙攣のような動きもある。


もう水も飲まない。


それでもリリは頑張っていた。


一生懸命生きていた。


その姿を見るのが辛かった。


本当に辛かった。


頑張ってほしい。


でも苦しんでほしくない。


早く楽になってほしい。


その二つの気持ちがずっと心の中で揺れていた。


その夜。


私たちはリビングに布団を敷いた。


リリを真ん中に。


パパとママが両側に。


川の字になって眠った。


時々寝返りを打たせるために向きを変える。


おしっこを確認する。


タオルを交換する。


ペットシーツを交換する。


写真を撮る。


そして撫でる。


ずっと撫でる。


一晩中、

二人でリリに話しかけ続けた。


少しでも快適に過ごしてほしい。


少しでも安心してほしい。


それだけを願っていた。


この夜が、

リリと一緒に過ごした最後の夜になった。

(第10話へ続く)

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